頻出度 ◎(古文ならどの一行にも出てくる。これが読めないと単語を一つも引けない)。
現代語の仮名遣いは表音主義です。「あわれ」と聞こえれば「あわれ」と書きます。古文は違います。平安時代に「あはれ」と発音していた語を、実際の発音が「あわれ」へ変わったあとも、ずっと「あはれ」と書き続けた。これが歴史的仮名遣いです。
つまり古文の本文は、いわば千年ほど前の発音の化石です。書いてある字と読む音がずれるだけでなく、読みを直さないと辞書の見出しが引けない。「あはれ」のまま古語辞典を引いても載っていません。「あわれ」に直して初めて引けます。歴史的仮名遣いを知らないとは、読み間違えるというより調べる道具を持たずに本文へ放り込まれるということです。
幸い、このずれには規則があり、しかも五つに収まります(次段)。暗記すべきは語彙ではなく、置き換えの手順です。
「言語文化」古典入門:仮名遣いの変遷を実際の原文で確認する
春は曙、やうやう白くなりゆく山ぎはすこしあかりて紫だちたる雲の細くたなびきたる。
春は明け方(が良い)。だんだん白くなっていく山ぎわが、少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいている(のが良い)。
本課の要点:「やうやう」→ ヨウヨウ(ハ行転呼なし・ヤ行)/「山ぎは」の「は」は語中なので ワ と読む
つれづれなるまゝに、日ぐらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
手持ち無沙汰なので、一日中硯に向かって、心に浮かんでは消える取るに足らないことを、とりとめもなく書きつけていると、奇妙なほど夢中になってしまう。
本課の要点:「むかひて」→ ムカイテ(語中の「ひ」→ イ)/「あやしう」→ アヤシュウ(ウ音便)