已然形接続の「まし」を反実仮想・願望・詠嘆に訳し分ける。打消「ざり」や存続「なり」との重なり、後続の「ば」「ものを」が作る二段構えを、蔵書の公版文で決める
Step 1 / 21 · 概念learning.pageUi.coreProgress
頻出度 ◎。現代語の「〜たらよかったのに」に当たるのが、古文の助動詞「まし」です。訳を「もし〜たら」に固定すると、この語の用いている情感が消えます。
| 用法 | 意味 | 訳 |
|---|---|---|
| 反実仮想 | 現実に反する仮定 | 〜だったろうに |
| 願望・詠嘆 | 叶わないことを惜しむ | 〜たいのに/〜ことよ |
| 推量の過去 | 昔の話として見込む | 〜だったのだろう |
助動詞は未然形に付くものが多い中で、「まし」はめずらしく已然形に付きます。已然形は「すでにそうなった」を表す形なので、その上に仮定を立てると、実際にはそうなっていないという反実が生まれる——これがこの語の仕組みです。
年立ちかへるなどをかしきことに歌にもふみにも作るなるは、猶春のうちならましかばいかにをかしからまし。
前半で「春のうちなら(もし春のころなら)+ましかば」と仮定を立て、後半「をかしからまし」で感情に着地します。扱いの現実は春ではない季節の紅葉なので、起きていないことを惜しむ話です。仮定と着地の二段で一つの文ができる、というのが「まし」のかたちそのもの。だから訳も「もし春のうちにあったなら、さぞ面白かっただろうに」と二層にしてやる必要があります。